「今日の夕飯、何が食べたい?」
そう聞いても、
「わからない」
と返ってくる。
何か食べてもらわないと心配だけれど、食欲がない人に、いったい何を作ればいいんだろう。
うつ病の家族を支えていると、食事ひとつでも悩むことがあります。
私自身、夫がうつ病で休職していた時期に、毎日の食事について考えることが増えました。
管理栄養士なので、もちろん栄養のことも気になります。
でも実際には、栄養バランスを考える前に、
「今、この人が食べられるものは何だろう」
と考えることのほうが多くなりました。
この記事では、うつ病で食欲が落ちている家族に、実際にどんなふうに食事を用意したらいいのか、家族側が頑張りすぎないための考え方も含めてまとめます。
食欲がないときは「一人前」を目標にしなくていい
普段なら一人前食べられる人でも、食欲が落ちているときには、それだけの量を食べることが負担になることがあります。
そんなときは、最初からたくさん盛りつけなくても大丈夫。
例えば、
- 小さめのおにぎりにする
- ご飯を少なめにする
- スープを少量だけ用意する
- おかずを少しずつ盛る
- ヨーグルトや果物を少量にする
など。
「これくらいは食べてほしい」と思う気持ちはあっても、目の前にたくさんの料理が並ぶことで、かえって負担になることもあります。
最初は少なめにして、食べられそうなら追加する。
そんな方法でもいいと思います。
「食べやすいもの」を優先していい
食欲がないとき、
「野菜も食べないと」
「バランスよく食べないと」
と考えてしまいます。
もちろん、栄養バランスを考えることは大切です。
でも、そもそも食べること自体が難しいときに、毎回完璧な食事を目指す必要はありません。
例えば、
- おにぎり
- お茶漬け
- うどん
- おかゆ
- スープ
- 味噌汁
- 卵料理
- 豆腐
- ヨーグルト
- バナナなどの果物
など、本人が「これなら食べられそう」と思えるものを選んでもらう。
その日の体調によって、食べられるものが変わることもあります。
昨日は食べられたものが、今日は食べたくない。
そんなことがあっても不思議ではありません。
「何が食べたい?」と聞いても決められないとき
家族としては、本人の食べたいものを用意してあげたい。
でも、
「何が食べたい?」
と聞いても、
「わからない」
と返ってくることがあります。
そんなときは、選択肢をいくつか出してみる方法もあります。
「うどんとお茶漬けなら、どっちが食べられそう?」
「ご飯とパンなら、どっちがいい?」
というように、ゼロから考えてもらうのではなく、選択肢を絞ってみる。
それでも決められないなら、
「今日はこれにしておくね」
くらいでもいい。
家族が毎回、本人の食べたいものを完璧に当てる必要はありません。
食事を何回かに分けてもいい
一度にたくさん食べられない場合は、食事を小分けにする方法もあります。
朝食で十分に食べられなかったら、後から少し食べる。
昼食を全部食べられなければ、残しておいて後で食べる。
一回の食事量だけを見て、
「全然食べていない」
と判断しないことも大切です。
その人が無理なく食べられる方法を探していきます。
食べられない日は、家族が料理を頑張りすぎない
ここは、私自身が夫の休職を経験して強く感じたことです。
家族が食べられない状態になると、
「少しでも栄養のあるものを作らなきゃ」
と思います。
私もそうでした。
でも、毎日それを続けていると、作る側が疲れてしまいます。
冷凍食品でもいい。
スーパーのお惣菜でもいい。
レトルトでもいい。
簡単な麺類でもいい。
前日の残り物でもいい。
「今日はこれでいい」
と思える食事があっていいと思います。
家族を支える人まで疲れ切ってしまわないことも、大切だからです。
食べられるものが偏っても、すぐに完璧を目指さない
食欲がない時期には、
「これしか食べられない」
ということもあるかもしれません。
同じものが続くと、家族としては、
「栄養が偏ってしまう」
と心配になります。
でも、食べられない状態のときに、
「もっといろいろ食べないと」
とプレッシャーをかけることが、本人にとって負担になることもあります。
まずは食べられるものを確保する。
体調が少し戻ってきたら、食べられるものを少しずつ増やしていく。
そんなふうに段階を踏んでもいいのではないでしょうか。
「食べさせる」ことまで家族の仕事にしなくていい
家族が心配になるのは当然です。
「ちゃんと食べてほしい」
「体力を落としてほしくない」
そう思います。
でも、食べることまで家族がコントロールしようとすると、本人も家族も苦しくなってしまいます。
食事を用意する。
食べられそうなものを提案する。
食べられる環境を作る。
そこまでできたら、あとは本人に任せる。
そんな線引きも必要なのだと思います。
食事だけで何とかしようとしない
食欲がない状態が続くと、
「私の作る食事が悪いのかな」
と家族が自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
でも、食欲の変化にはさまざまな要因が考えられます。
食事だけで解決しようとせず、
「最近、食べられていない」
「以前より食欲が落ちている」
など、気になることは主治医に伝えてみることも大切です。
特に、食事や水分がほとんど取れない状態が続く、体重の減少が気になるなどの場合は、自己判断で様子を見続けず、医療機関に相談しましょう。
私が夫の食事で大切にするようになったこと
夫が休職していた時期、私は最初、
「ちゃんと食べてもらわなきゃ」
という気持ちが強かったと思います。
管理栄養士としての知識もあるので、余計にそうだったのかもしれません。
でも、夫の様子を見ながら過ごしているうちに、
「何を食べさせるか」より、「食べることが負担にならないようにすること」
のほうが大切な時期もあるのだと感じるようになりました。
食べられるものを用意する。
少量から出してみる。
本人が選べるようにする。
食べられない日は、無理に勧めない。
そして、私自身も頑張りすぎない。
それくらいでいい日もありました。
家族の食事も、無理をしない
うつ病の家族を支えていると、本人のことばかり考えてしまいます。
「今日は何を食べさせよう」
「ちゃんと栄養を摂れているかな」
「このままで大丈夫かな」
そんなことを考えているうちに、自分の食事が適当になってしまうこともあります。
でも、支える側にも食事は必要です。
夫の食事と自分の食事を、毎回同じにする必要もありません。
夫には食べやすいもの。
自分には自分が食べたいもの。
そんな日があってもいい。
家族を支える人の食事まで後回しにしないこと。
これも、私自身が大切だと感じたことの一つです。
「今日は何を食べさせよう」から少し離れてみる
うつ病で食欲がない家族を見ていると、食事のたびに心配になるかもしれません。
でも、毎回完璧な食事を用意する必要はありません。
少量でもいい。
食べやすいものでもいい。
簡単なものでもいい。
食べられた日は、
「今日は少し食べられた」
と考える。
そして、食べられない状態が続くときには、家族だけで抱え込まず、医療機関に相談する。
食事は大切ですが、家族だけですべてを背負う必要はありません。
「何を食べさせればいいんだろう」と悩んだときには、まずは今日食べられそうなものを一つ考えてみる。
それくらいから始めてもいいのだと思います。
